加藤恭子

バブル経済が崩壊した1991年以降、能力に関する様々な概念が巷に溢れている。人間力、EQ、察知力など人間の内面に注目したもの、社会人基礎力、就職基礎能力など社会人になるために学生に必要とされる能力の明確化を目指したもの、そして日本のビジネス界で使用されるようになった新たな能力の概念がコンピテンシーである。 しかしながら、コンピテンシーに対する共通の定義はコンピテンシーの本家といわれるアメリカにおいても得られていない状況であり、日本においても概念が輸入されてから10年以上経つが、未だ共通の定義を見ない。 その原因は、コンピテンシーという概念がビジネスの領域だけでなく教育・司法・臨床心理学などの広い領域使用され、その中で異なった定義がされている点、また実務が先行してしまい、研究が後追いになっている点などがあげられる。そのため、実務の世界ではコンピテンシーを有効に活用することこそが重要であり、その用語自体はさほど重要ではないとする声もある。このような状況が、コンピテンシー概念の混乱に拍車をかけ、次第に言葉そのものが軽んじられているようになってきた。 日米におけるコンピテンシー概念の生成と混乱(PDFファイル)